「肩こりで病院に行ってもいいの?」

「病院では薬を出されるだけ?」

「肩こりに注射やハイドロリリースをすることもあるの?」

肩こりが長く続いている方の中には、このような疑問を持つ方もいらっしゃると思います。

肩こりは、首すじや首の付け根から肩、背中にかけて、張り・重さ・こり・痛みなどを感じる症状です。ただし、その背景は一人ひとり異なり、首や肩周囲の筋肉だけでなく、頚椎や肩関節などの病気が関係している場合もあります。

そのため、病院での肩こり治療で大切なのは、最初から治療方法を決めることではなく、まず現在の症状や原因を確認することです。

そのうえで、症状に応じて薬物療法、注射治療、ハイドロリリース、リハビリテーションなどを組み合わせていきます。日本整形外科学会でも、肩こりの治療として薬物療法や局所注射、運動療法などが挙げられています。

この記事のポイント

  • 肩こりで病院を受診した場合、まず症状の背景や原因を確認します
  • 症状に応じて薬物療法、注射治療などを検討します
  • トリガーポイント注射や神経ブロックは、症状や原因によって使い分けます
  • ハイドロリリースも治療選択肢の一つですが、すべての肩こりに行う治療ではありません
  • 当院では、医師が適応を判断したうえでハイドロリリースを保険診療で実施しています
  • 痛みを和らげるだけでなく、自ら身体を動かし、日常生活や運動につなげることも大切です

肩こりで病院を受診すると、まず何をする?

肩こりというと、「筋肉が硬くなっているだけ」と考える方も多いかもしれません。

しかし、肩こりのように感じる症状の中には、頚椎疾患や肩関節疾患など、別の病気が関係しているものがあります。

日本整形外科学会では、肩こりの診察で問診や神経学的診察、筋肉の圧痛・緊張、肩関節の可動域、頚椎疾患の有無などを確認し、必要に応じてレントゲンやMRIなどの検査を行うとしています。citeturn2view0

2026年8月に発表された国内の最新レビューでも、整形外科医の役割として、まず注意が必要な病気を除外し、頚椎由来・肩関節由来などを評価したうえで治療する重要性が述べられています。

「肩こり」という症状だけを見るのではなく、その症状がどこから生じているのかを考えることが治療の第一歩です。

肩こりの原因や、「どのような場合に病院を受診した方がよいの?」という疑問については、シリーズ①の「肩こりの原因・対策と病院を受診する目安」で詳しく解説しています。公開済みの①では、しびれや筋力低下など受診を検討したい症状についても紹介しています。

肩こりにはどんな治療がある?

肩こりの治療には一つの決まった方法があるわけではありません。

症状が強いときには痛みを和らげる治療を検討し、必要に応じて運動療法や生活上の工夫を組み合わせます。日本整形外科学会は薬物療法、局所注射、運動療法などを挙げており、日本ペインクリニック学会の治療指針でも、薬物療法、神経ブロック、トリガーポイント注射、リハビリテーションなどは痛みの診療を構成する異なる治療手段として扱われています。

治療主に検討される場面・適応目的注意点
薬物療法痛みや筋肉の緊張など、症状に対する治療が必要な場合痛みや不快感を軽減し、日常生活を送りやすくする症状、持病、他の薬との兼ね合いなどを確認して選択する。薬だけで原因そのものが解決するとは限らない
注射治療筋肉の圧痛が目立つ場合や、原因となる病態に応じて神経への治療が必要な場合など局所の痛みや、原因に応じた痛みを和らげるトリガーポイント注射と神経ブロックは同じ治療ではない。症状・診察所見から適応を判断する
ハイドロリリース筋・筋膜周囲などの関与が考えられ、診察やエコー所見等を踏まえて医師が適応と判断した場合筋・筋膜周囲などの組織間に液体を注入し、痛みの軽減や動きやすさにつなげることを目指す一般的な肩こりすべてを対象にする治療ではない。処置だけで完結させず、身体を動かすことも重要
リハビリ・運動療法身体機能、活動量、日常生活や仕事での身体の使い方などへの対応が必要な場合首・肩周囲だけでなく身体機能や活動を整え、日常生活を行いやすくする全員に同じ運動を行うのではなく、原因疾患・症状・身体機能に応じて内容を調整する

治療の選択は、この表のどれか一つに決めるというより、その方の症状に応じて組み合わせるものです。特に2026年の国内レビューでは、肩こりの治療について、原因疾患があればその治療を行い、原発性の肩こりでは薬物療法を運動療法・生活指導と組み合わせる考え方が示されています。

肩こりに対する薬物療法

肩こりの症状や原因によっては、外用薬や痛みに対する薬、筋肉の緊張に対して使用する薬などが検討されることがあります。日本整形外科学会も、肩こりに対する治療の一つとして湿布薬や筋弛緩薬などの薬物療法を挙げています。

ただし、「肩がこるからこの薬」と一律に決めるわけではありません。

例えば、頚椎の病気に伴う神経の症状がある場合と、首・肩周囲の筋肉の痛みが主体の場合では、治療の考え方が変わります。

現在の症状だけでなく、持病や服用している薬なども確認したうえで治療を選択します。

肩こりに対する注射治療

肩こりや首・肩周囲の痛みに対して、状態に応じて注射治療を検討することがあります。

代表的なものの一つがトリガーポイント注射です。筋肉に圧痛がみられる部位などを評価し、局所麻酔薬などを用いて痛みの軽減を図ります。日本ペインクリニック学会の治療指針でも、トリガーポイント注射はインターベンショナル治療の一つとして扱われています。

一方、神経ブロックはトリガーポイント注射とは異なります。痛みに関係している神経やその周囲などを対象とする治療で、どのようなブロックを行うかは原因となる病態によって異なります。JSPCの治療指針でも、頸部に関連する神経ブロックには複数の手技が区別して記載されています。

「肩こりだから、とりあえず注射をする」のではなく、何が症状に関係しているのかを確認して治療方法を選ぶことが重要です。

ハイドロリリースとは?

ハイドロリリースは、超音波(エコー)で筋肉や筋膜などの組織を確認しながら、組織の間などへ生理食塩水等の液体を注入する手技です。国内では肩こりや筋筋膜性疼痛などに対して用いられることがあります。日本ペインクリニック学会の公開治療指針にも「Fasciaリリース」がインターベンショナル治療の一項目として掲載されています。

2020年に『臨床雑誌整形外科』に掲載された国内報告では、肩こりに対するハイドロリリースの効果が検討されました。一方、この論文では当時、ハイドロリリースの手技や注射部位、安全性についての報告はあるものの、有効率や有効期間に関する文献はほとんどないことも指摘されていました。

その後は研究が増えており、上部僧帽筋の筋筋膜性疼痛を対象としたランダム化比較試験では、超音波ガイド下の筋膜間への注入による疼痛軽減を示す報告もあります。一方で、注入する液体、比較する治療、対象患者、併用する治療が研究によって異なり、肩こりという幅広い症状すべてに結果をそのまま当てはめることはできません。

当院では、症状や診察所見などから医師が適応を判断したうえで、ハイドロリリースを保険診療で実施しています。

ハイドロリリースを受けたら、それだけでいい?

ここは、肩こりの治療を考えるうえで特に大切なポイントです。

ハイドロリリースだけでなく、自ら身体を動かすことも重要です。

ハイドロリリースなどによって痛みが軽くなり、身体を動かしやすくなった場合には、その状態を日常生活や運動につなげていくことを考えます。

例えば、首や肩を必要以上に動かさない状態が続いている方、デスクワークで長時間同じ姿勢が続いている方、身体活動が少なくなっている方では、症状に合わせながら身体を動かす機会をつくることが大切です。日本整形外科学会も肩こりの予防・治療として適度な運動や体操、運動療法を挙げています。

実際、近年のハイドロディセクションの臨床研究には、処置後にセルフストレッチを継続した研究や、セルフマッサージ・セルフストレッチなどのホームプログラムを併用した研究があります。そのため、これらの研究結果を読む際にも「注射だけの効果」と「自ら身体を動かす取り組み」を完全に切り離して考えられない場合があります。

また、国内では2021年に肩こり・頚肩腕痛に対する運動療法のレビューが発表され、さらに2026年8月の最新特集でも肩こりの保存療法における運動療法が詳しく取り上げられています。

「治療を受けて終わり」ではなく、痛みが和らいだ状態を利用して、自分自身で身体を動かしやすくしていくことも治療の大切な部分です。

ただし、痛みを我慢して無理に運動すればよいという意味ではありません。原因となる疾患や症状の強さによって適切な運動量は異なるため、状態に合わせて調整します。

肩こりのリハビリテーション

肩こりのリハビリテーションは、単に肩を揉んだり、首をストレッチしたりするだけではありません。

状態に応じて、首を支える筋肉、肩甲骨周囲の機能、胸郭の動き、身体活動量、日常生活での身体の使い方、デスクワークなどの作業環境についても確認します。

大切なのは、「この筋肉を鍛えれば肩こりが治る」と一つの方法に決めることではなく、症状や身体機能、生活環境に合わせて運動内容を考えることです。日本理学療法学会連合の頚部機能障害理学療法ガイドラインでも、非特異的頚部痛に対する運動・筋力トレーニングや教育的アプローチが臨床課題として扱われています。citeturn1search1

肩こりのリハビリについては、シリーズ③の「肩こりのリハビリ・運動療法について詳しく見る」で、首を支える深部筋、肩甲帯、胸郭、作業姿勢、有酸素運動などについて詳しく解説します。

いまがわクリニックでは痛みの治療と「動くこと」をつなげます

いまがわクリニックでは、肩こりや首・肩周囲の痛みについて、まず整形外科で現在の症状や身体の状態を確認します。

そのうえで、症状に応じて薬物療法や注射治療などを検討します。

当院では、医師が適応を判断した場合、ハイドロリリースを保険診療で行っています。

一方で、当院が大切にしているのは、痛みへの治療だけで終わらせないことです。

痛みが強く身体を動かしにくいときには、まず痛みを和らげる治療を検討します。そして身体を動かしやすくなってきたら、必要に応じてリハビリテーションを組み合わせ、自分自身で身体を動かせる状態を目指します。

リハビリテーションでは、首だけでなく、肩甲骨周囲や胸郭の動き、筋力、身体活動、日常生活や仕事での身体の使い方などを確認します。

「医師による痛みへの治療」と「自分自身で身体を動かすこと」を組み合わせながら、日常生活で困っている動作へつなげていくことが大切です。

まとめ

肩こりで病院を受診した場合、全員に薬や注射を行うわけではありません。

まず、肩こりの背景に頚椎や肩関節などの病気がないかを確認し、現在の症状に合わせて治療方法を考えます。日本整形外科学会や2026年の国内レビューでも、原因疾患がある場合にはその治療を行い、それ以外では薬物療法、運動療法、生活への対応などを組み合わせる考え方が示されています。citeturn2view0turn6search3

治療の選択肢には、

  • 薬物療法
  • トリガーポイント注射や症状に応じた神経ブロック
  • ハイドロリリース
  • リハビリテーション・運動療法

などがあります。

当院では、適応がある場合にはハイドロリリースを保険診療で実施しています。

そして、ハイドロリリースを含む痛みへの治療だけで完結させるのではなく、自分自身で身体を動かしていくことも大切だと考えています。

「肩こりが長く続いている」「マッサージをしても繰り返す」「痛くて身体を動かしにくい」「薬や注射、リハビリについて相談したい」という方は、一度現在の状態を確認してみましょう。

肩こりの原因や病院を受診する目安については、シリーズ①の「肩こりの原因・対策と病院を受診する目安」もあわせてご覧ください。