「パソコン作業をしていると、夕方には肩がパンパンになる」
「姿勢を良くしようとしているのに肩がこる」
「椅子や机を変えれば肩こりはなくなるの?」
デスクワークをしている方の中には、このような悩みを持つ方も少なくありません。
肩こりがあると、「猫背だから」「姿勢が悪いから」と考えてしまいがちです。
しかし、デスクワーク中の首・肩の症状を、姿勢だけで説明することはできません。
大切なのは、一つの「正しい姿勢」をずっと保つことではなく、作業姿勢、モニターや机などの環境、同じ姿勢が続く時間、身体を動かす機会などをまとめて見直すことです。
この記事のポイント
- デスクワークの肩こりは「姿勢だけ」が原因とは限りません
- 一つの理想的な姿勢を長時間保つことが目的ではありません
- モニター、キーボード、マウス、椅子などを身体に合わせて調整します
- 長時間同じ姿勢を続けず、姿勢を変えたり身体を動かしたりすることも大切です
- 症状が続く場合には、運動や仕事の状況なども含めて考えます
デスクワークで肩がこるのはなぜ?
パソコン作業では、画面を見ながらキーボードやマウスを操作するため、首や肩を大きく動かさない時間が長くなりやすくなります。
特に仕事に集中していると、気づかないうちに長時間ほとんど同じ姿勢で作業していることがあります。
また、モニターやキーボードの位置が身体に合っていなければ、画面を見るために頭を下げ続けたり、腕を前に伸ばした状態でマウスを操作したりすることもあります。
さらに、身体を動かす機会、仕事量、休憩の取りやすさなど、さまざまな要素が首・肩の症状に関係することがあります。
そのため、「猫背だから肩がこる」と一つの原因に決めつけるのではなく、仕事中に身体がどのような状態になっているのかを全体として確認することが大切です。
肩こりそのものの原因や受診の目安については、「肩こりはなぜ起こる?原因・対策と病院を受診する目安を解説」もご覧ください。
「正しい姿勢」をずっと保てばいい?
デスクワークでは、「背筋を伸ばして正しい姿勢を保ちましょう」と言われることがあります。
もちろん、首を大きく曲げ続ける、身体をひねったまま作業する、肩をすくめたままマウスを操作するなど、身体に無理のある作業姿勢を見直すことは大切です。
一方で、一つの姿勢を「これが正解」と考えて長時間固定する必要はありません。
背筋を伸ばそうとして必要以上に身体に力を入れ続ければ、その姿勢自体がつらくなることもあります。
目指したいのは「完璧な姿勢を維持すること」ではなく、無理の少ない姿勢で作業しながら、ときどき姿勢を変えられることです。
まず見直したいデスクワークの作業環境

作業環境は「何cmなら絶対に正しい」と一律に決めるのではなく、身体の大きさや仕事内容に合わせて調整することが基本です。
そのうえで、確認したいポイントを紹介します。
1.モニターの位置
画面を見るために、頭を大きく下げたり、首や身体をひねったりしていないか確認してみましょう。
厚生労働省の情報機器作業に関するガイドラインでは、ディスプレイとの視距離はおおむね40cm以上とし、画面の上端がおおむね目の高さか、やや下になるようにすることが望ましいとされています。
ただし、これはあくまで作業環境を調整するための目安です。画面の大きさや視力、仕事内容などに合わせて、無理なく画面を確認できる位置に調整します。
2.キーボードとマウスの位置
キーボードやマウスを操作するとき、肩をすくめたり、腕を大きく前へ伸ばしたりしていないか確認します。
マウスが身体から離れすぎていると、腕を前に出した状態で操作する時間が長くなることがあります。
肩や腕に必要以上の力を入れなくても操作できる位置を探してみましょう。
3.椅子と足元
椅子の高さが身体に合っていないと、机に合わせるために肩を上げたり、身体を前へ寄せたりすることがあります。
座ったときに身体が安定しているか、背もたれを利用できるか、足裏が床や足台で支えられているか、腕を無理なく使える高さになっているかを確認します。
「高価な椅子に変えれば肩こりがなくなる」というわけではありません。まずは現在使っている椅子や机を、自分の身体に合わせて調整できないか確認することが大切です。
4.ノートパソコンを長時間使う場合
ノートパソコンは画面とキーボードが一体になっているため、「画面を見やすい高さ」と「手を使いやすい高さ」を同時に調整しにくいことがあります。
長時間使用する場合には、仕事内容や環境に応じて、外付けのモニターやキーボード、マウスなどを利用する方法もあります。
机や椅子だけでなく「作業時間」も見直す
作業環境を整えても、長時間ほとんど同じ姿勢でパソコン作業を続けていれば、首や肩、腰などへの負担が続きやすくなります。
そのため、環境を整えることと同じくらい、作業の途中で姿勢を変えることも大切です。
厚生労働省の情報機器作業に関するガイドラインでは、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までに10~15分の作業休止時間を設け、一連続作業時間の中にも1~2回程度の小休止を設けることが示されています。
これは肩こりの治療として「全員が必ずこの時間で休まなければならない」という意味ではなく、情報機器作業による身体の負担を減らすための労働衛生上の目安です。
実際の仕事では、自由に休憩を取ることが難しい場合もあります。
そのような場合でも、仕事の区切りで立つ、コピーや書類を取りに行く、肩や腕を軽く動かす、座り方を変えるなど、できる範囲で身体を動かす機会をつくってみましょう。
「ずっと良い姿勢で座る」よりも、「同じ姿勢を続けすぎない」という考え方がポイントです。
デスクワークの肩こりには運動も必要?
デスクワーク中の工夫だけでなく、身体そのものを動かすことも大切です。
慢性的な首の痛みがあるオフィスワーカーでは、首や肩周囲の筋力トレーニングなどの運動によって、症状の軽減が期待できる可能性が報告されています。
ただし、全員に同じ運動が適しているわけではありません。
首を支える筋肉、肩甲骨周囲の機能、胸郭の動き、普段の身体活動などを確認し、その方の状態に合わせて運動を考えます。
また、「仕事中に少し動けば十分」というわけではなく、仕事以外の時間も含めて身体活動を確保することも大切です。
具体的なリハビリテーションについては、「肩こりのリハビリ・運動療法では何をする?首・肩甲骨・胸郭を確認する理由」で詳しく解説しています。
肩こりのリハビリ・運動療法では何をする?首・肩甲骨・胸郭を確認する理由
仕事の負担やストレスも含めて考える
首・肩の症状を考えるときには、身体の姿勢や机の高さだけでなく、仕事量、休憩の取りやすさ、ストレスなど、仕事を取り巻く状況を確認することもあります。
これは「肩こりは精神的な問題」という意味ではありません。
首・肩の症状には、身体的な要素だけでなく、仕事や生活を含む複数の要素が関係する可能性があるためです。
「机と椅子を調整したのに良くならない」ときには、身体だけ、姿勢だけに原因を求めるのではなく、普段の活動や仕事の状況も含めて考えてみることが大切です。
肩こりが続く場合は「デスクワークのせい」と決めつけない
パソコン作業中に肩がこるからといって、すべての症状がデスクワークによって起きているとは限りません。
首や肩の痛みが長く続いている、症状が強くなっている、腕や手に痛みやしびれがある、力が入りにくいなどの場合には、一度医療機関で状態を確認することをおすすめします。
「いつもの肩こり」と思っていても、首や肩の疾患などが関係している場合があります。
必要に応じて行われる薬や注射などの治療については、「肩こりは病院でどう治療する?薬・注射・ハイドロリリースについて解説」も参考にしてください。
肩こりは病院でどう治療する?薬・注射・ハイドロリリースについて解説
いまがわクリニックでは作業姿勢や環境も確認します
いまがわクリニックのリハビリテーションでは、首や肩周囲の身体機能だけでなく、必要に応じて普段の仕事や作業姿勢についても確認します。
単に「姿勢を良くしてください」とお伝えするのではなく、どのような作業で症状が出るのか、同じ姿勢がどのくらい続くのか、モニターや机などの環境をどのように調整できるのかなどを考えます。
また、身体の状態に応じて、首・肩甲骨周囲の機能や胸郭の動きなどを確認し、必要な運動につなげていきます。
仕事そのものを避けるのではなく、現在の生活や仕事内容の中で実行できる方法を考えることが大切です。
まとめ
デスクワーク中の肩こりを、「姿勢が悪いから」と一つの理由だけで説明することはできません。
作業環境を見直すときには、
- 画面を見るために首を大きく曲げたりひねったりしていないか
- キーボードやマウスを無理なく操作できるか
- 椅子や足元が身体に合っているか
- 同じ姿勢が長時間続いていないか
- 仕事中や仕事以外で身体を動かす機会があるか
などを確認してみましょう。
大切なのは、「正しい姿勢をずっと保つこと」ではなく、自分の身体や仕事内容に合わせて作業環境を調整し、同じ姿勢を続けすぎず、適度に身体を動かすことです。
環境を調整しても肩こりが続く場合や、痛み・しびれなどを伴う場合には、デスクワークのせいと決めつけず、医療機関で現在の状態を確認しましょう。
痛みの治療から予防まで。
いまがわクリニック

