腰が痛いとき、「できるだけ動かさない方がいい」と思っていませんか?
腰痛があると、「動いたらもっと痛くなるのではないか」と不安になり、できるだけ安静にしてしまう方もいらっしゃいます。
もちろん、痛みが非常に強いときに無理をして身体を動かす必要はありません。
一方で、腰痛があるからといって、必要以上に長く身体を動かさないことが常に良いとは限りません。
大切なのは、「痛いから全く動かない」と考えるのではなく、症状を確認しながら、できる範囲で日常生活の活動を保っていくことです。
この記事のポイント
- 腰痛があっても、すべての方に長期間の安静が必要なわけではありません
- 痛みへの不安から身体を動かさなくなる「恐怖回避」が起こることがあります
- 必要以上に活動を避ける状態が続くと、活動量や身体機能が低下することがあります
- 大切なのは、症状に合わせながらできる範囲の活動を続けることです
- 痛みが強くて身体を動かせない場合には、痛みへの治療とリハビリを組み合わせることもあります
腰が痛いときは安静にした方がいい?
腰痛があると、「腰を休ませた方が早く良くなるのでは?」と思うかもしれません。
しかし、腰痛がある方すべてに長期間の安静が必要というわけではありません。
英国のNICE(National Institute for Health and Care Excellence:英国国立医療技術評価機構)の腰痛・坐骨神経痛のガイドラインでは、自己管理の一つとして、患者さんの状態に応じた説明を行い、通常の活動を続けることを勧めています。
「腰が痛い=できるだけ動かない」ではなく、現在の症状に合わせながら活動を維持するという考え方が重要です。
「痛くて動くのが怖い」ことも腰痛に関係する?
腰痛が続いていると、身体を動かすこと自体が怖くなることがあります。
例えば、
- また強い痛みが出そうだから歩かない
- 腰を痛めそうだから身体を曲げない
- 痛みが出るのが怖くて外出を控える
- 運動すると腰が悪くなると思って運動をやめる
といった状態です。
このように、「動いたら痛みが悪化するのではないか」という恐怖や不安から、必要以上に身体を動かすことを避けてしまうことを「恐怖回避」と呼びます。
痛みを避ける行動そのものがすべて悪いわけではありません。身体を守るために、一時的に動きを控えることが必要な場合もあります。
問題になるのは、実際の身体の状態以上に「動くことは危険だ」と感じ、長期間にわたって必要な活動まで避けてしまう場合です。
動かない状態が続くとどうなる?
痛みへの不安から活動を控える状態が続くと、普段歩く距離が短くなったり、外出の機会が減ったりすることがあります。
その結果、筋力や体力などの身体機能が低下する場合があります。
そして身体を動かす機会が減ることで、以前ならできていた動作にも負担を感じるようになり、さらに活動を控えるという悪循環につながることがあります。
NICEのガイドライン作成時の資料でも、腰痛が長期化した場合には、身体機能の低下や通常活動からの離脱、不安などが互いに影響する可能性について説明されています。
腰痛があっても「活動を維持する」とは?
活動を維持するというのは、痛みを我慢して激しい運動をするという意味ではありません。
例えば、その日の症状に合わせながら、
- 家の中を歩く
- できる範囲で家事をする
- 短時間の外出から始める
- 無理のない範囲で仕事や日常生活を続ける
- 状態に合った運動を行う
など、必要以上に活動を止めないことを考えます。
「痛みが完全になくなるまで動かない」ではなく、「現在できることから少しずつ続ける」という考え方です。
ただし、腰痛の原因や症状によって適切な活動量は異なります。痛みを我慢して無理に動けばよいわけではありません。
運動すると腰痛が悪化しない?
「運動したら腰をさらに傷めるのではないか」と不安になる方もいらっしゃいます。
腰痛の運動療法では、いきなり強い負荷をかけるわけではありません。
痛みの程度や身体の状態を確認しながら、現在できる動きから始め、必要に応じて運動の内容や負荷を調整していきます。
運動療法は、筋力をつけることだけが目的ではありません。身体を動かす経験を積み重ねながら、「この動きならできる」という感覚を取り戻していくことも大切です。
運動によって恐怖回避が軽減する可能性を示した研究もありますが、研究の確実性には限界があるため、「運動すれば恐怖が必ずなくなる」と考えるものではありません。
痛くて運動できない場合はどうする?
腰痛が強いと、「動いた方がよいと言われても、痛くてできない」ということがあります。
そのような場合に、無理に運動する必要はありません。
まず痛みの状態や原因を確認し、必要に応じて痛みに対する治療を行い、身体を動かしやすい状態をつくったうえでリハビリテーションに取り組む方法があります。
「痛みへの対応」と「身体を動かすこと」を別々に考えるのではなく、症状に合わせて組み合わせることが重要です。
いまがわクリニックでは腰痛をどのようにみる?
いまがわクリニックでは、腰痛がある方について、まず整形外科で現在の症状や状態を確認します。
必要に応じてペインクリニックで痛みに対する治療を検討し、リハビリテーションでは腰だけでなく、体幹や下肢の筋力、身体の動き、日常生活での身体の使い方などを確認します。
また、「痛みが怖くて動けない」という場合には、単に運動を指示するのではなく、現在できる動作を確認しながら活動量を考えていくことが大切です。
どのような腰痛は医療機関へ相談した方がいい?
腰痛の多くは時間とともに改善していきますが、腰痛にはさまざまな原因があります。
痛みが強く日常生活が難しい、症状が長く続いている、脚のしびれや力の入りにくさがあるなどの場合には、医療機関への相談を検討してください。
また、腰痛に加えて排尿・排便の異常など新しい症状がある場合には、早めの診察が必要になることがあります。
まとめ
腰痛があるからといって、長期間できるだけ動かない方がよいとは限りません。
痛みへの恐怖から必要以上に活動を避ける「恐怖回避」が続くと、日常生活での活動量や身体機能が低下する場合があります。
大切なのは、
- 痛みを無視して無理に動くことでもなく
- 痛みがなくなるまで全く動かないことでもなく
- 症状に合わせながら、できる活動を続けていくこと
です。
「腰が痛くて運動できない」「痛みが長引いている」「痛みが怖くて動くのを控えている」という場合には、まず現在の腰痛の状態を確認したうえで、できることから考えていきましょう。
痛みの治療から予防まで。
いまがわクリニック

