「腰が痛いけれど、MRIを撮った方がいいの?」

「レントゲンだけで本当に大丈夫?」

「MRIを撮れば腰痛の原因が分かる?」

腰痛で医療機関を受診すると、このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、腰痛があるからといって、すべての方にMRIが必要なわけではありません。

まず症状の経過や脚の痛み・しびれ、筋力などを診察で確認し、重い病気が疑われる場合や、画像検査の結果によってその後の治療方針が変わる可能性がある場合にMRIなどの検査を検討します。

強い腰痛であっても、診察で重い病気や明らかな神経障害が疑われない場合には、すぐにMRIを撮らずに治療を始めることもあります。

腰痛ならMRIを撮った方がいい?

MRIは、腰の中を詳しく確認できる有用な検査です。

椎間板や神経、脊柱管など、レントゲンでは詳しく確認できない組織を評価できます。

しかし、「詳しく見える検査だから、腰痛の方全員が撮った方がよい」というわけではありません。

日本の「腰痛診療ガイドライン2019」では、神経症状のない非特異的腰痛では、初診時のレントゲン撮影も必ずしも必要ではないとされています。

また、重い病気を疑う所見がない急性腰痛では、早い段階から画像検査を行っても、痛みや身体機能などの経過が良くなることは示されていません。

そのため、画像検査をするかどうかは「腰がどれくらい痛いか」だけではなく、診察によって判断することが大切です。

MRIの前に、まず診察で確認することがあります

腰痛の診療では、画像を見る前に、まず症状について詳しく確認します。

例えば、

  • いつから痛みが始まったか
  • どのようなきっかけで始まったか
  • 腰だけが痛いのか、脚まで痛むのか
  • 脚のしびれがあるか
  • 脚に力が入りにくくなっていないか
  • 歩行に変化がないか
  • 排尿や排便に変化がないか
  • 発熱などの全身症状がないか
  • 転倒や外傷がなかったか
  • 骨粗鬆症やがんなどの病歴がないか

などを確認します。

さらに、必要に応じて筋力、感覚、反射などの神経学的な診察を行います。

こうした問診や診察によって「画像検査が必要かどうか」を判断すること自体が、腰痛診療の重要な部分です。

どのような場合にMRIを検討する?

MRIが必要になる状況は一人ひとり異なります。

代表的には、次のような場合に詳しい画像評価を検討します。

重い病気が疑われる場合

腰痛の多くは生命に関わるものではありませんが、まれに骨折、感染、腫瘍、重い神経障害などが隠れていることがあります。

症状の経過や病歴、診察所見などからこうした病気が疑われる場合には、MRIやその他の検査を早めに検討します。

脚の筋力低下など、重要な神経症状がある場合

腰痛だけではなく、脚の明らかな筋力低下や進行する神経症状がある場合には、神経がどのような状態になっているかを詳しく評価する必要があります。

また、排尿がしにくい、尿が出ない、会陰部の感覚がおかしいなどの症状は、緊急性のある神経障害でみられることがあります。

このような場合は、通常の腰痛として様子を見るのではなく、速やかな評価が必要です。

症状が続き、検査結果によって治療方針が変わる場合

すぐにMRIが必要でなくても、治療を続けても症状が改善しない場合や、脚の痛み・しびれなどが続く場合には、経過に応じてMRIを検討することがあります。

特に、検査結果によって手術や一部の専門的な治療を検討するなど、その後の治療方針が変わる可能性がある場合には、MRIが重要な情報になります。

腰が強く痛くても、すぐにMRIを撮らないことがあるのはなぜ?

「こんなに痛いのだから、MRIを撮った方がいいのでは?」と思うのは自然なことです。

しかし、痛みの強さと、MRIが必要かどうかは必ずしも同じではありません。

重い病気を疑う所見のない急性腰痛については、早い段階から画像検査を行っても、通常の診療と比べて痛みや身体機能などの患者さんの経過が改善するとは限らないことが報告されています。

つまり、MRIは「念のため全員に撮っておく検査」というより、診察で得られた情報をもとに、必要なときに目的を持って行う検査と考える方が適切です。

MRIに異常が見つかれば、それが腰痛の原因?

ここは、腰痛とMRIを考えるうえでとても重要なポイントです。

MRIに変化が写っているからといって、それが現在の腰痛の原因とは限りません。

MRIでは、

  • 椎間板の変性
  • 椎間板の膨らみ
  • 椎間板突出
  • 脊椎の加齢による変化

などが見つかることがあります。

しかし、このような変化は腰痛のない方にもみられます。

無症状の方を調べた研究では、加齢とともに椎間板の変性や膨隆などのMRI所見が増えることが報告されています。

例えば「椎間板が変性しています」という画像所見があっても、それだけで「これが痛みの原因です」と決めることはできません。

一方で、一部のMRI所見は腰痛のある方に多くみられることも報告されています。

そのためMRIは「意味がない」のではなく、症状、診察所見、画像所見が一致しているかを総合的に考えることが重要です。

レントゲンとMRIでは何が違う?

レントゲン

レントゲンは、骨の形や配列、変形、骨折などを評価するのに適しています。

一方、椎間板や神経などの軟らかい組織を詳しく見ることには向いていません。

また、腰痛だからといって、すべての方に最初からレントゲン撮影が必要というわけでもありません。

MRI

MRIでは、椎間板、神経、脊柱管などをレントゲンより詳しく評価できます。

放射線を使用しないことも特徴です。

ただし、「MRIの方が詳しいから最初からMRIを撮ればよい」ということではありません。

レントゲンとMRIは優劣ではなく、何を確認したいのかによって使い分ける検査です。

「MRIを撮らない=原因を調べていない」ではありません

腰痛の診療では、画像検査だけで診断するわけではありません。

痛みが始まった状況、症状の変化、脚の症状、筋力や感覚、動作など、多くの情報を組み合わせて状態を評価します。

MRIが必要かどうかを判断することも、その診療プロセスの一部です。

そしてMRIを撮った場合にも、画像に写った変化だけを見るのではなく、患者さんの症状や診察所見と照らし合わせて解釈する必要があります。

このような症状がある場合は早めに相談してください

腰痛のほとんどが緊急性の高い病気というわけではありません。

一方で、次のような症状や状況がある場合には、早めの医学的評価が必要になることがあります。

  • 脚の力が急に入りにくくなった、または悪化している
  • 尿が出にくい、尿が出ないなど排尿に変化がある
  • 股の周囲や会陰部の感覚がおかしい
  • 発熱など全身症状を伴う
  • 大きな外傷のあとから強い腰痛がある
  • 骨粗鬆症があり、転倒などのあとから強く痛む
  • がんなどの治療歴があり、新しく腰痛が出てきた

これらに当てはまるからといって、必ず重い病気があるという意味ではありません。

症状の組み合わせや診察結果から判断する必要があります。

いまがわクリニックでの腰痛診療

いまがわクリニックでは、腰痛の診察で症状の経過、脚の痛みやしびれ、筋力、日常生活への影響などを確認し、必要な検査や治療を検討します。

当院にはMRI装置はありません。

診察の結果、MRIによる詳しい評価が必要と判断した場合には、MRI検査が可能な医療機関へ紹介しています。

「MRIを撮れるかどうか」から診療を始めるのではなく、まず現在の症状を評価し、MRIが診断やその後の治療方針に役立つと考えられる場合に検査を検討します。

まとめ

腰痛があるからといって、すべての方にMRIが必要なわけではありません。

腰痛の診療では、まず症状や神経症状などを確認し、重い病気が疑われるか、画像検査によってその後の治療方針が変わるかなどを考えて検査を選びます。

また、MRIに変化が見つかっても、それだけで腰痛の原因と決めることはできません。

大切なのは、

症状 → 診察 → 必要な検査 → 結果を症状と照らし合わせる

という流れで考えることです。

腰痛に加えて脚のしびれや筋力低下がある、症状が続いている、現在の状態について不安がある場合にはご相談ください。

よくある質問

腰痛が強ければMRIを撮った方がいいですか?

痛みが強いという理由だけで、必ずMRIが必要になるわけではありません。症状の経過、神経症状、診察所見などから必要性を判断します。

レントゲンで異常がなければMRIを撮った方がいいですか?

必ずしもそうではありません。レントゲンとMRIでは確認できるものが異なります。MRIが必要かどうかは、症状や診察所見、その後の治療方針などを踏まえて判断します。

MRIを撮れば腰痛の原因は分かりますか?

MRIは有用な検査ですが、画像に写る変化が現在の痛みの原因とは限りません。症状や診察所見と画像を照らし合わせて考えることが重要です。

坐骨神経痛があればMRIは必要ですか?

坐骨神経痛がある方全員に、すぐMRIが必要とは限りません。筋力低下などの神経症状、症状の経過、治療への反応などによって検討します。

いまがわクリニックでMRI検査はできますか?

当院にはMRI装置はありません。診察の結果、MRIによる評価が必要と判断した場合には、MRI検査が可能な医療機関へ紹介します。

痛みの治療から予防まで。

いまがわクリニック

参考資料

・日本整形外科学会・日本腰痛学会「腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版」

・National Institute for Health and Care Excellence(NICE)「Low back pain and sciatica in over 16s: assessment and management」

・American College of Radiology「ACR Appropriateness Criteria: Low Back Pain」

・Assessment and Treatment of Acute Low Back Pain: A Systematic Review(2026)

・Brinjikji W, et al. Systematic Literature Review of Imaging Features of Spinal Degeneration in Asymptomatic Populations. AJNR. 2015.